万年筆の基本的な知識
| 文具の豆知識
1.万年筆とは
ペン軸の内部に保持したインクが毛細管現象※1により、溝の入ったペン芯を通じてペン先に
持続的に供給されるような構造を持った筆記具です。
低筆圧で筆記でき、ペン先により様々な筆跡や書き味が得られる事は万年筆ならではの特徴です。
また、使い続けることでペン先に使用者の癖が付くため、使用者に馴染んだ書き味になってゆく事も魅力の一つです。
※1 細いところに向かって水分が浸透する現象のこと
2.ペン先(ニブ)
万年筆の肝とも言える部分です
ペン先の太さ、素材に多くの種類があり各メーカーの特徴・こだわりがでる部分でもあります。
ペン先の太さ:EF(極細)、F(細字)、M(中字)、B(太字)などが一般的ですが、Fだから何ミリ幅といった様な規定があるわけではなく、
各メーカー独自の基準によって決められており、海外メーカーの場合、日本よりもペン先がワンランク太い傾向にあります。
基本的な太さ以外に各社様々な太さがありPILOTでは15種類の太さがあります。
https://www.pilot.co.jp/library/001/pentopList.html
また、セーラー万年筆にはオリジナルペン先があり独自の世界観を作りあげています。
https://sailor.co.jp/movie/fp_specialnib/
ペン先の素材:ステンレス、スチールなどの合金と14金、18金、21金などの金を使用した物があります。
ある一定の価格まではほとんどがこのペン先の値段と言っても過言ではありません。
金は酸性のインクでも腐食に強く永く使用できる事からペン先として広く使用されています。
金の純度が高いほどペン先が柔らかくなります。しかし、全く同じ形状でなければペン先の柔らかさは
地金の厚さや形状による部分が大きく、素材だけでは一概に言えません。
また、書き味の好みも個々で異なるなる為、素材にこだわるよりも自分が書きやすいと思う
万年筆を選ぶ事を優先したら良いと思います。
3.メーカー(ブランド)
海外・国産と多くのメーカーがあります
国産:パイロット・セーラー万年筆・プラチナ萬年筆など
3大メーカーと呼ばれる上記以外にも職人さんが手作りでやっている工房系のメーカーも多数あります。
海外:モンブラン・ペリカン・ウォーターマン・アウロラ・パーカーなど
海外は欧州のメーカーが中心でしたが最近は中国や台湾などアジア系のメーカーも増えてきています。
4.インクの吸入方式
万年筆にインクを入れる方式は大きく分けて3つの方式に分かれています。
コスト面や携帯性など、それぞれ長所と短所がありますので、自分にあった方式を選びましょう。
吸引式:万年筆本体にインクタンクとインクを吸い取るピストン機構が備わっています。
ボトルインクからインクを吸い上げて補充します。
入るインクの容量は大きいので沢山書く人におススメです
カートリッジ式:携帯に便利であり、手間も比較的少なく済みますが、コスト面では吸入式に比べ劣ります。
カートリッジは基本的に万年筆と同じメーカーのものを使います。
互換性のあるヨーロッパ規格と呼ばれる形状もありますが同じメーカーのものを使う事が無難です。
メーカーによっては複数の形状がある場合がありますので対応しているカートリッジを選びましょう。
両用式:カートリッジを挿しても使えますが、コンバーターと呼ばれる吸入器を取り付けてボトルインクから
インクを吸い上げて利用する事も出来る方式です。最近の万年筆は両用式が多いです。
近年ご当地インクなどを含め様々なインクを楽しまれる方が多く、コンバーターを利用する方が増えています。
コンバーターの使用方法は下記動画を参考にしてみて下さい。
5.購入時のポイント
1.試筆 まずは試筆してみましょう。メーカー、太さ、ペン先の形状・材質によって書き味は大きく異なります
インクの吸入方式や自分の用途を頭に入れながら試筆を行い一番しっくりくる物を選びましょう!
用途にもよりますが初心者の方のペン先は細字~中字をおススメします。
2.デザイン 見た目から入るのもありです。書き味は慣れますがデザインは変える事ができないので自分の気にいったものを探しましょう。
ただし、握りやすさも重要なので試筆は必ず行いましょう。
3.予算 1,000円以下で買えるものから数十万円以上する高級品まで様々です。
安い商品で慣れてから高額商品を購入するか?最初に高額商品を購入しその1本を長く使用するか?
どちらも間違いではありません。無理のない予算範囲でまずは使ってみましょう。
プレゼントの場合は予算や年代層、渡される方が今現在万年筆を使っているか否かを店舗スタッフにお伝え頂くと提案しやすいかと思います。
また、デザイン的には渡される方が持った時にピッタリくるイメージの物を選ぶと良いでしょう。
万年筆は少し敷居が高い様に感じている方もいらっしゃると思いますが
使ってみればそこまで扱いが大変なペンではありません。
その名の通りきちんと使用していれば長く利用頂け
何代にも渡って引き継いで行ける価値のある物です。
生活の中に万年筆を取り入れてみてはいかがでしょうか?
H.M